近所でも有名なオタク高校に転校してきた美少女との話


俺の通っている高校は、

周りの人から「オタク高校」といわれていた。

それは単なる「口コミ」なのだが、

子供がこの高校入りたい!というと、

親はきまって

「あそこはちょっとおかしいからやめなさい。」

や

「あんなオタク高校には入っちゃだめだよ。」

の様に必ず否定する。

だから年々入学者数は減っていって、

俺が高校1年生の時は1クラスしかなくて、

しかも生徒が18人しかいなかった。

ちなみに2年は14人、3年生は15人なので、

俺らの代は比較的多いほうだった。

18人と言っても、

9人9人で男女分かれている訳ではない。

男子14人、女子4人で圧倒的男子のほうが多かった。

でも唯一の女子4人はこれっぽっちも可愛くなくて、

彼女すらセックスもしたくない程度の顔だった。

この学校に入ったことだけあって、

俺、井上 夏も結構なオタクだった。

オタクと言っても鉄道オタクやアニメオタク、

いろいろな種類があるが俺はパソコンオタクだった。

パソコンを分解できるほどの知能もあるし、

インターネットだってほぼ毎日見ていた。

もちろんブラインドタッチもできる。

とにかくこの学校はオタクが集まる高校、

だから「オタク高校」と言われていた。

運動会もかなりグダグダに終わって秋に入った。

秋に入ったとことで大きなイベントが行われるわけでもなく、

文化祭だってこの高校にはなかった。

しかし10月26日、

俺の、いやこのクラスの転機が訪れる。

この日はいつまでたっても覚えている。

いつも通りやる気のない

朝のHRHが始まろうとして先生が教室に入ってきた。

「おいうるさいぞー!」その声で教室内の話声は消えた。

「えー、今日は大事なお知らせがある。この学校に新しく入るクラスメイトがいる。」

瞬間、クラスメイトが声を上げた。

「マジかよ!!!」

「うそだろっ!?」

先生が再び注意を促して、

「今はまだ校長先生と話しているから、そうだな、9時くらいにこの教室に来るだろう。」

するとクラス一お調子者の隆貴が先生に質問をした。

「先生っ!女子ですか!?」

「男子ですか?」を言わなかったため、皆笑いあった。

「まったく隆貴はそういうことしか考えられないのか・・・。まぁ隆貴の言っている通り女子だ。」

「おっしゃぁぁぁ!!!きたーー!!」

雄叫びとも思える大声が教室内を響かせた。

それから 朝のHRHは普通に、

でもちょっと意外な内容で終わった。

1時間目は歴史だった。

ちなみにクラスの中には歴史オタクが2人いた。

歴史は担任の授業で、

そこまでふざけて受ける生徒もいなかった。

すると教室のドアがガラッと空いた。

「あっ来た来た。こちらが今日からこの学校に転校してきた朝野 紗希さんだ。じゃあ自己紹介してくれるかな。」

彼女はすこし恥ずかしいのか、

顔を赤らめながら自己紹介した。

「えっと、親の関係でこの学校に転校してきました朝野 紗希と言います。みんなと仲良くなりたいので、いっぱい話しかけてくれると嬉しいです。よろしくお願いします。」

礼をした彼女にクラスから拍手が送られた。

しかし歓声がなかった。

お調子者の隆貴から誰ひとり口をあけることはなかった。

その理由は―――――可愛いから。

彼女が可愛いから皆少し見とれていた。

もちろん、セックスも、彼女にもしたい子だった。

「朝野の席は井上の隣だ。ほら、あいつが井上。」

一瞬何を言われているか分からなかった。

その意味を理解するのに時間がかかった。

そして心の中ではものすごくドキドキしていた。

フル勃起状態だった。

このときだけは仕方ないんじゃないか。

朝野は席に座る前、俺に、

「よろしくお願いします。」と軽く会釈をしてから座った。

「好きです!」と今すぐ言ってしまいたかったが、

早すぎると自分でツッコミを入れた。

いくらなんでも某マンガの転校生にはなりたくなかった。

1時間目が終わって休み時間になると俺の周りに人が集まった。

いや、正確に言うと

「俺の近くにいる朝野の周りに人が集まった」だ。

「朝野さんはどこに住んでたの?」

「北海道のほうだよ。」

「朝野はなんでこの学校に来たの?」

「親の仕事場が移転しちゃって。」

「なんて呼んだらいい?」

「んー朝野でも紗希でも・・・なんでもいいよ(笑)。」

最初から気に入られようとする奴もいたし、

唯一の女子4人組も朝野と仲良くなりたいようだった。

するとお調子者の隆貴、時に空気をブチ壊す男がこう聞いた。

「朝野さんは何オタク?」

「えっオタク?オタクってなに?」

この瞬間、皆の顔から笑顔は消えて、

驚いた顔に変っていた。

朝野は自分が何をしたか分からないで、

「えっ?私、変なこと聞いちゃった?」

と焦っていた。

ここでチャイムが鳴ってしまった。

朝野を取り囲んでいた連中はぞろぞろと自分の席に戻った。

「さっきのオタクって何のことなの?」

授業中、朝野は小声で俺に聞いてきた。

なんていうか迷ったが、

俺は適当な知識を拾い集めて、

「んー、何かに熱中してることかな。例えば鉄道に熱中していたら鉄道オタク、アニメが好きでそれに熱中してるやつはアニメオタク、みたいにオタクにはいろんな種類があるの。朝野さん知らないと思うけど、この高校はオタクばっかりが集まってる高校なの。ちょっと変わってる、っていうか結構変わっている。」

ちょっと適当すぎたか、

朝野はまだよくわかっていない様子だった。

でも朝野は気を利かしてくれて、

「いの・・・えっと」

「井上ね。井上 夏。」

「あっごめん。で、井上君は何オタクなの?」

「俺はパソコンかな。パソコンいじるのとか、とにかくパソコンなら結構知ってるって感じ。あと井上でいいよ。」

「へぇ~パソコンかぁ~。お父さんがいじってるのは見たことあるけど、私はあんまり知らないな~。井上だとちょっと抵抗あるから、井上君にさせて。井上君は朝野でいいよ。」

朝野だと抵抗あるから・・・、

と言ってしまうと埒が明かないので、

承諾することにした。

「でもここの高校、そうだったんだ~。全然知らなかった。でもちょっと面白そうだな~。」

「このクラスの女子もオタクだよ。全員アイドルオタク。あっ、アイドルって言っても男のほうね。」

「へぇ~!私あんまりテレビとか見ないけど、このクラスになじみたいから今日から見よっかな(笑)。」

個人的には唯一クラスの可愛い女子がオタクにはなってほしくなかった。

が、それを否定するわけにもいかず、

「テレビは飽きないからね(笑)。」と、朝野の話に合わせた。

朝野が来てから1カ月たった。

もうすっかり朝野はクラスになじんでいたが、

オタクにはなっていなかった。

周りの奴も朝野をオタクにしようとする奴はいなかったし、

仲良くするのに夢中だった。

そういう意味では俺らのクラスは仲が良かったのかもしれない。

俺と朝野もたぶんクラスメイトの中でも結構仲が良かった。

授業中はよく話すし、

たまに休み時間でも話したりしていた。

ただ話している内容は決まってパソコン関係の話だった。

「私、昨日インターネットやったよ!」

「パソコンのキーボードって難しいね^^;」

「パソコンってゲームもできるんだ!初めて知った!」

話している内容は変わっていたが、

それでも朝野との距離は1歩ずつ近づいていった。

時には俺が遅刻して遅れて学校に歩いて行ったら、

偶然朝野に会ったこともあった。

お互い走って競争した。

意外にも朝野は足が速かった。

しかし今までうまくいっていた分、

残念な出来事があった。

それは普通の学校ならなにより楽しみな、

2chなら「wktk」が大量発生するであろう、

「席替え」だった。

朝野と席が遠くなり、

話す回数も日に日に減っていった。

隣だった時は毎日話していたが、

今ではもう他人の様に話さなくなってしまった。

しかし仲が良くなるイベントもないまま、

俺たちは2年生になった。

が、この年最悪な事態が起こった。

入学式が行われなかったのだ。

そう、1年生が誰1人入学しなかった。

クラスの中では、

「このままじゃこの学校ヤバいんじゃないの!?」

「学校終了フラグ~」

言いたいこと言いあっていた。

するとある日の朝、校長が全生徒の前に立ち、こういった。

「えー、この年は1年生が1人も入学してこなかった。教師一同、非常に残念に思っている。1年生が誰も入ってこなかったので、今の2年生が卒業した時点で廃校が決定した。」

多少考えていたことだが、

いざ現実を前にすると少し悲しくなってきた。

生徒たちは衝撃すぎて口を開くものはいなかった。

「しかし廃校するまではこの学校はあり続ける。

だから3年生、2年生は最後まで頑張ってほしい。」

今日言われたことが頭に残っていて、授業中は上の空だった。

廃校・・・か。俺らが卒業したらもうこの学校はなくなるんだな・・・。

その思いが一粒の雫となって目からノートにこぼれた。

誰にもばれたくなかったから顔を伏せた。

休み時間、クラスメイトは集まって話していた。

「俺らが最後の代か~。なんか実感ないな~。」

「これからどうするんだろ。」

皆思ってることは違うが、

寂しい、ということは同じだろう。

窓の向こうは雨が降り始めていた。

この日から俺たちは何事にも一生懸命に取り組んでいた。

朝のHRHも静かにしていたし、授業中も真剣に受けていた。

確実にこのクラスはいい方向に進んでいった。

オタクを除いては。

そして奇跡的に俺は朝野の家に行くことになる。

その日は朝野が学校を休んでいた。

休んだ理由はただの風邪、と先生が言っていた。

で、小学校の時よくあったが休んだ人の家に行ってプリントを届ける、

がうちの高校では行われていた。

でも、よほど大事なプリントじゃなければやらない。

この日は健康診断に関するプリントで結構重要だった。

「このプリントは重要だから朝野の家に届けてもらいたいんだが・・・誰かやってくれる人はいるか?」

いくらなんでも、積極的にそこまでする人はいなかった。

というか空気的に手を挙げずらかった。

「いないか~。じゃあ先生が勝手に決めるぞ。今日は2日だから出席番号2番に頼んだ。」

2番か~。・・・俺じゃん!!!

このときはドキドキした、っていうかびっくりした。

帰り道、先生から朝野の家を教えてもらい迷いながらも家に着いた。

・・・・・・でかいな。

稀に見る豪邸だった。いや、ただ俺の家が小さいだけか?

緊張しながら家のインターホンを鳴らした。数秒たって返答があった。

「はい。」声からして母親だった。

「あっ、同じクラスの井上と言います。えっと、プリントを届けに来ました。」

「わざわざありがとう~。ちょっと待っててね。」

よかった。優しそうな親だ。

ドアが開いて、朝野の母さんが出てきた。

「今、紗希が起きてるから上がってかない?」

「ほえっ?」つい、気の抜けた声が出てしまった。

それは、つまり、俺が、朝野の、家に、上がる、って事ですか?

「ほら、ここまで来さして何か悪いじゃない。ねっ?」

「あっ、じゃあおじゃまします。」俺は奇跡的に朝野の家にあがった。

「わざわざありがとう。」

朝野がマスクをした口で俺に言った。

風邪がうつらないように、

と距離をあけるのは残念だったがまぁ仕方ない。

「いやいや、全然いいよ。風邪大丈夫?」

言って気がついた。風邪をひいてるってことは大丈夫じゃない、ってことだ。

「大丈夫じゃないけど、大丈夫(笑)。」

「なんだそりゃ(笑)。」

笑い声が朝野の部屋に響いた。

「そういえばさ、私パソコン壊れちゃったんだよね。」

「え?なんで?」

「なんか、電源がつかないの。」

百聞は一見に如かず、という事で例のパソコンを見せてもらった。

確かに電源ボタンを押してもつかない。

しかし俺も一回こうなったことはある。

「それたぶん、保護回路が働いてるんだよ。」

「保護回路?」

俺は昔やった手順で朝野のパソコンをいじった。

数分たってパソコンの電源ボタンを押すと見事に電源がついた。

「えぇ~すごい!!井上君頭いいんだね!」

軽く褒められてテンションが上がった。

「まぁパソコンだけだからね。」

すると朝野が急に咳をし始めた。

「あっ俺そろそろ帰るね。がんばって直してね。お大事に。」

そう言って朝野の家を出た。

それからといったものの、

朝野は風邪を治して学校に来たが、

相変わらず俺と話す、ということは少なかった。

しかし1回だけ大笑いしたことがあった。

朝野が俺に突然聞いてきた。

「ねぇ、オーズって何?」

オーズ?こっちが聞きたい。

「昨日ね、インターネットで動画見てたらコメントにオーズって。なんだろ?わかんない?」

オーズ・・・。もしかしてあれのことか?

「それorzのこと?」

「あっそうそう、それ。意味わかるの!?」

「それ人間が床に落ち込んでる時の顔文字っていうのかな?とにかく、落ち込んでいる人を表してるの?」

それでも朝野はまだ分からないようなので、俺は自分の体を使って説明した。

「ほら、ここがoで、ここがr、ここがz、ね?」

「あっほんとだ~!すごい!おもしろい!!」

俺もorzを中2で見た時何が何だか分からなかった。

でも、話したのはそういうパソコン、ネット関係のことだけだったorz。

冬に雪が降った。クラスでは校庭に出て雪合戦をした。

制服が思いっきり濡れて、

教室がびしょびしょになって先生に全員で怒られた。

でも、それも数少ない思い出のうちの1つだった。

超巨大雪だるまを作ったこともあった。

全長2メートル、横幅2メートル。

サイズを間違えてかなり不恰好になったが、

逆にそこが愛着がわいた。

クラスもまとまりつつ3年生になった。

この1年後にはもう学校がない、

その事もだんだん現実味がでてきた。

一応この学校は学校らしいこともしている。

その中に学級委員を決める、というのが1つだ。

男女1人ずつで、仕事の内容は誰も知らない、

というか誰も聞いたことがない。

なぜなら担任の先生が「あれやれこれやれ」言うので

年ごとにやることが違うのだ。

今年の学級委員に俺は立候補するつもりだった。

なぜならこの学校の最後を最高な形で迎えられるように、

自分で進んで取り組みたいからだ。

今までこんな仕事をしたことがないから失敗はあると思うが、

やっぱり悔いは残したくなかった。

「じゃあ今日は学級委員を決める。男子でやりたい奴はいるか?」

ハイ。迷わず手を挙げた。その瞬間、クラスから歓声が漏れた。

「おぉ~まじか井上!」

「夏マジかよ!!!」多少照れた。

俺のほかに手を挙げてる人はいなかった。

ということは信任投票で過半数を取れば学級委員になることになる。

「男子は井上だけか。じゃあ女子でやりたい奴はいるか?」

すると朝野が手を挙げた。やはり歓声があがった。

「おぉ朝野さんスゲー!!」

「紗希ガンバレーー!!」

俺は朝野とやりたいと思っていたが、

ほんとにやるとなるとちょっと緊張してしまう。

今まで朝野と話してなかった分、

ドキドキ感が一層増した。

「学級委員って意外に簡単だね(笑)。」

朝野が俺に言う。

「まぁ仕事があんまりないからね。」

学級委員になって2カ月たち、6月になった。

信任投票で二人とも過半数を変えて学級委員となった。

が、学級委員らしい仕事はまだやっていなかった。

「井上君さ、何で学級委員になったの?」

いきなり聞かれた質問は少し悩んだ。

「この学校、これで最後じゃん?で、下手におわらしたくないわけよ。やっぱりこのクラスで最高な形で卒業して、大人になって学校は残ってないけど思い出に残るような高校生活にしたいから・・・そんな理由じゃだめかな?」

きれいごとっぽい言い草だが、本当に思っていることだ。

「ううん!いいと思う!っていうか、私も同じような理由で学級委員になったの。私、実は転校する前はいじめられてたの。」

突然のカミングアウトにどう反応していいか困る。

「いじめられてた、っていうか無視されてた、っていうか。でもこの学校は私を受け入れてくれて、オタクっていうちょっと変わってるけどでも一緒にいて楽しかった。私ね、またこの高校卒業したら引っ越さなきゃいけないんだ。」

「えっ!?引っ越し?」

「うん。北海道。でっかいどうで有名の。」

でっかいどうで有名ではないな、うん。

「だから、最後はやっぱり良い形で終わらせたいから。」

引っ越し、と聞いてすごく驚いた。

じゃあ同じ大学に上がることもできないし、

ましてや付き合うって事もできないのか・・・。

現実はそんなにうまくいかないのか・・・。

「がんばろうな。」

「えっ?」

「だから、せっかく学級委員になったからにはがんばろうぜ!」

やばい、かっこつけて変なこと言っちまった。今すぐに訂正したかったが、朝野は、

「うん!がんばろう!」

と笑顔で答えた。

運動会も19人じゃやれることは少なかった。文化祭も行われなかった。

でも、それでも、やっていけることは全力で取り組んだ。

気づけば最後の月、3月に入っていった。

そしてある日、学級委員二人で集まって、話し合った。

「ねぇ、最後の思い出作りになんか大きいことやろうよ!」

朝野が俺に提案してきた。

「大きいこと?」

「そう。なんか、ほらタイムカプセルとか・・・あっ、でもタイムカプセルはだめか。学校壊されちゃうんだっけ。う~ん、そうだなぁ・・・」

考えて考えて、何分くらい経っただろう。朝野が口を開いた。

「そうだ!学校壊される、それを逆手に取ればいいんじゃない!?」

言っている意味がよくわからなかった。

「どういう意味?」

「だから、校舎とかに何かしても壊されるんでしょ?だからなんでもしていい、ってことじゃない?」

俺からすればそれは名案だった。

「なるほど!」

「だったら皆で校舎に色塗っちゃう!?」

校舎に色を塗る、一見バカげた考えだったが、

俺らからすればそれは大真面目だった。

「でもそれさ、校長先生とか言わなければいけないんじゃない?」

「お願いします!最後の思い出作りなんです!」

二人で校長先生がいるところに行って、直々頼んだ。

「いい案だね。学校は君たちが卒業して1週間ちょっとで壊れることになってる。だから別にいいよ。」

「やったーー!!」

あっさりお許しが出て驚いたが、素直に喜んだ。

「でも、」

まだ校長先生の話には続きがあった。

「楽しくやるんだよ。」

ついに校舎に色を塗る日になった。

クラスメイトは前々から絵具などを用意していた。

赤、黄、緑、青、黒、さまざまな色があった。

生徒たちは思いっきり校舎に色を付けて、

文字も書いて、教室内にも塗ったりした。

そして、でっかく「今までありがとう」と書いた。

数時間かけて塗った校舎はカラフルに仕上がっていた。

次の日、卒業式が行われた。クラス全員泣いていた。

鉄道オタクも、アニメオタクも。

もちろんパソコンオタクの俺も。朝野も。

1週間後には俺たちの塗った校舎が壊されるんだ。

そう思うと自然に涙があふれてきた。

卒業証書をもらって、教室で最後のHRHを行って、卒業となった。

しかし結局、俺は朝野に何も言えず終いだった。

もう一回だけ教室見ときたいな、そう思ってカラフルな教室に戻った。

ドアを開けたら朝野が窓から顔を出していた。

しかし、俺が入ったことに気がついて振り返る。

「何してんの?」俺は朝野に聞いた。

「もう一回教室を見ようかな、と思って。」

あっ、俺と同じだ。

「なんかさ~あっけなかったね。」

「うん。」

確かに思ったよりあっけなかった。

「でもさ、やりたいことやったからいいよね!やっぱりやりたいことはやんないと。」

その言葉は俺にぐさっと刺さった。

―――やっぱり、告白したい。告白しないで後悔するのなんて嫌だ!

俺の心は静かに燃えた。

「あのさ、朝野。」

「なに?」

「えっとさ朝野、北海道いついくの?」

好きです、の4文字が言えない。

「明後日。」

「マジ!?」

ちょっと驚いた。でも今は告白のほうに集中していた。

「でもさ~北海道って寒いイメージがあるからちょっと不安だな~。私さ、さむが・・・」

「朝野!」

もうここしかない。これでいわなかったら後悔する――――。

「俺、朝野のこと好きだ!北海道行っちゃっても俺好きだ!」

「えっ・・・。」

「転校した時からずっと好きだった!」

ついに言った。2年間ずっと言えなかった思いを。

「・・・私も好きだよ。」

下を向いて顔を赤らめながら言った

朝野の言葉はしっかりと俺の耳に届いた。

「もう会えなくなるけど・・・ずっと好き。」

「お、俺もだよ!」

俺は思うがままに朝野の手を握った。

朝野は抵抗しなかった。

むしろ、握り返してきた。

「俺、絶対朝野のこと忘れないから!」

「私も忘れないよ・・・。」

朝野は泣いた。数秒後、つられて俺も泣いた。

瞬間、抱き合った。

「今までありがとう・・・。」

そして朝野は北海道に旅立った。やがて彩られた校舎は壊された。

俺はなぜか泣かなかった。しかも心が清々しかった。



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