大学では吹奏楽のサークルに入っています。
 同じサークルに入ってる彼女は、自慢の彼女だったりします。
 まわりからうらやましがられるくらい可愛くて、スタイルも良くて、成績優秀で、どんなことにも一生懸命で、料理が上手くて。
 僕のほうから本気で惚れてて、未だに手をつなぐだけで緊張してしまいます。
 初めての彼女ということもあって、キスはしたもののどうやってエッチまで持っていくのか、正直わからずに付き合って一年になるのに、まだキスだけです。
まわりからは、「20歳超えてあんな可愛くてスタイルいい子と付き合っててやってないって、ほぼ拷問だろ」と言われますが、それでも本気で惚れてるのでキスだけでも満足でした。
毎年夏に近隣の大学と合同練習があります。一週間くらい林間学校で使われる宿泊施設を借りて行う合同練習です。
僕も彼女も大学三年で、僕はサークルの副部長をやっているのでやることが多くて大変でした。
 自分の楽器はもちろん、ちゃんと他の大学と親交を深めているのかも見て回る必要があって。
そして、彼女の担当楽器はアルトサックスでした。
 アルトサックス同士、集まって練習しているところを見回ったときに、彼女以外はほぼ男で、ちょっと抵抗がありました。
夏だったので、薄着で、Tシャツ姿の彼女ははっきりスタイルのよさとか、胸の大きさがわかってしまう服でした。
 心配になって、何度か見回ってました、そうしたら他の大学の男達が声掛けてて、
 「玲菜ちゃん(彼女の名前)、リードってどれくらいの硬さ使ってる?」
 リードはサックスの口に含む部分につける道具です。
硬さとかメーカーがいろいろあって、そういう情報交換をするのもこの合同練習の目的のひとつです。
 「私は……3くらいがちょうどいいかな」
 「そんな薄いんだ? ちょい玲菜ちゃんの試させてくれない?」
 「ん……えっと……」
 彼女は困ったように苦笑いしてました。
リードは葦という植物で作ったもので、使用してるうちに口につけるものですから、唾液で濡れてしまいます。
 男同士、女同士であればそういうやり取りもしなくもないのですが、他の大学の女の子相手にすることじゃありません。
 とめようかどうか、迷いました。
ちょっと離れたところから見ていたので、僕には気付いてません。
 断るのも申し訳ないって思ったんでしょう、僕が迷ってる間に、自分のサックスからリードを取り外して、軽くタオルで拭いただけのリードを渡していました。
「じゃあ、使った後ので悪いけど……はい」
 「ありがと、じゃあ試すね」
 多分、長時間練習していたから、拭いたとは言っても、リードには玲菜の唾で濡れてると思います。
 間接キス、しかも自分の目の前で。
 かなりムカムカしましたが、我慢することにしました。
その後、何度か見回ると、他の大学の男と玲菜は楽しそうにしゃべったり練習したりしてて、嫉妬しました。
夜は食事会という名の飲み会でした。
 僕は副部長ということもあって、各大学の部長、副部長と一緒に飲んでいました。
玲菜は担当楽器同士で飲んでたみたいで、僕は複雑でしたが、抜けて玲菜のサックスの集まりに顔を出すのも不自然で、結局そのまま玲菜とは顔を合わせませんでした。
その夜、「合同練習楽しんでる?」みたいにメールして、「うん、楽しんでるよ」みたいな返事が来て、さらに心が複雑でした。
次の日は飲み会はなくて、夜に玲菜を誘っても、
 「ごめんね、女子同士で集まっておしゃべりしてるから、ちょっと抜け出せる雰囲気じゃないかな」
 みたいな返事が来ました。
 合同練習に来て、副部長ということもあってやること多くて、玲菜とまともに会話できていません。
一方、練習中にアルトサックスを見回ると、
 「ちょっと玲菜ちゃんの楽器貸して?」
 「うん、いいよ、はい」
 みたいな感じで、玲菜は楽器の貸し借りも抵抗なくしていました。
アルトサックスは口につける道具で、完全に間接キスです。
 にも関わらず平然と貸し借りしてて、かなり複雑でした。
夏だから相変わらず玲菜は薄着で身体のラインがわかる服で、日によっては透けブラもしてて。
 玲菜みたいな可愛い子が大学生の男の前でそんな格好して、そういう目で見られないほうがおかしいってことに気付いているのかいないのかわかりませんが、僕の精神状態も普通でいられませんでした。
合同練習のレクリエーションとかもあって距離が縮まって、警戒心が薄れているんだと思いました。
 何度も見回るたびに嫉妬してました。
4日目くらいだったと思います、見回りしてたら、玲菜がアルトサックス担当の他の大学の男に背中を押されて、練習を抜け出している光景が見えました。
 正直、玲菜が告白とかされるんだと思いました。
あわてて後ろから追いかけると、二人が消えていったのは男子の部屋でした。
 多分、そいつが使ってる部屋だと思います。
 心臓バクバクになりながら、嫌な汗をかきながら、僕はとりあえず様子を見ようとその部屋に近付きました。
 夏の暑い日でしたから、部屋の中に熱気がこもるのが嫌で、ドアは開けっ放しにしてたんだと思います。
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「もう、まだ練習中なのに、こんなに露骨に抜け出したらバレちゃうよ……?」
「別にバレてもいいって、それより、玲菜と間接キスして、我慢できなかったし」
「あー、間接キスで興奮するって、かわいー」
「もちろん、間接キスだけじゃ足りないけどな」
聞こえてきた二人の会話に、心臓が止まりました、目の前が真っ暗になりました。
 浮気、そんな二文字が頭の中に浮かびました。
まさか、玲菜が……そう思いましたが、二人がキスする音が部屋の中から聞こえてきました。
 それだけじゃなく、衣擦れの音、服を脱がせる音が聞こえてきます。
「やべ、たまんね……玲菜の身体って、本気でエロい。今日の下着は……ブルーだな」
「うん、水色、嫌い?」
「いや、似合ってる。すげーエロい。玲菜、巨乳だし」
衣擦れの音のあと、吸い付く音が聞こえて来ました。
「あっ、キスマークだめ……後でみんなでお風呂入るとき、バレちゃう」
「こんなエロい身体してる玲菜が悪ぃんだからな。Eカップだっけ?」
「うん……Eカップ……んんっ……あっ、また跡ついちゃった……おっぱい、キスマークだらけにされたら、絶対エッチしたってバレちゃうよぉ」
自分の彼女が、壁一枚隔てた場所で胸にキスマークつけられてて……そんな状況に、手や足に力が入りませんでした。
 口では抵抗してても、玲菜は嫌がってなくて、されるがままに胸にキスマークつけられてて。
「もう我慢できないからクンニせずにそのまま挿れるから、濡れまくってるから大丈夫だよな」
「このまま、なんてっ……コンドームないから、だめぇ……」
「外で出すから大丈夫だって」
そして、押し倒す音、乱暴にキスしながら服を脱がせる音が聞こえてきました。
「はぁっ……はぁっ……ぁああっ、やだ、敏感になってる、だめ……」
ぱん、ぱん、ぱん、ぱんとリズミカルな音が聞こえて来ました。
 いつの間にか玲菜は挿れられてたみたいです。
そして、胸を弄られて、キスマークつけられてたときから感じてたんだと思います。
 かなり大きな声で感じまくっていて、僕は気付いたら涙と鼻水を垂れ流していました。
「玲菜、声大きすぎ。ほら、枕噛んで声我慢しろって、さすがにバレる」
「うんっ、んんんっ、んっ、んんんんんっ……」
くぐもった声が聞こえてきます。
 多分、玲菜は枕に顔を埋めて声を我慢してるんだと思います。
 そんなに感じてるんだ……僕はまたショックを受けてしまいました。
「玲菜、愛液垂らしすぎw シーツおねしょみたいになってるしw」
「んんんんっ! だって、気持ちいいんだもんっ、あんっ、あんっ、あっ、だめぇっ……声、出ちゃうっ……」
僕はもう聞いていられませんでした。
 だけど、足にも手にも力が入ってくれなくて、その場から離れられなくて。
「やべ、玲菜がエロいから、もう出るっ」
どこに出したのかはわかりません、だけど、男のほうはイったみたいでした。
 しばらく二人の荒い呼吸だけが聞こえてきて、
「玲菜、ほら、ちゃんと気持ちよくしてもらった後は、お掃除しないと」
「はぁっ、はぁっ……うん、そだね……んっ、はむっ……」
そして、玲菜は呼吸を乱したまま、射精した後の男のアレを咥えたみたいでした。
「おいしい?」
「おいしくないよぉ……おちんちんと、自分の変なところの味だもん。それにしても、汗だくになっちゃった。こんなんじゃ練習戻れないよ?」
そんな風に二人でふざけあいながら、まだ戻ってくる気配はなくて、いちゃいちゃしてセックスの後の余韻に浸っているみたいでした。
僕はどうやって練習場所に戻ったのかわかりません。
 ただ、戻ったら顔色が悪い、あせびっしょりだから、医務室で休んでたらと薦められて、僕は医務室に向かいました。
その途中、玲菜と、男、二人とすれ違いました。
 親密そうに話しながら、乱れた髪と、ちょっと化粧が崩れた玲菜。
僕とすれ違うときに、ちょっと困ったように微笑んでくれた雰囲気でしたが、僕は玲菜の顔をみる余裕なんてあるはずありませんでした。
その日の夜、「気分悪くて医務室に行ってたんだ? 大丈夫だったの?」とラインが着ましたが、答えられませんでした。
結局、僕は体調不良ということで副部長ながら一週間の予定だった合同練習を五日目で帰ることになりました。
玲菜は日程をこなして、7日間合同練習に参加したみたいです。
 その間、何回練習を抜け出して、何回セックスしたんだろうと考えると、まともではいられませんでした。
携帯も壁に投げて壊して、バイトにもサークルにも顔を出さず、そんな夏休みを送りました。
 玲菜も何回か家に来たみたいですが、もちろん会う気はありません。
そんな態度を取ったんですから、玲菜も僕が浮気に気付いたことをわかったんだと思います、お互い連絡取らず、自然消滅になりました。



